まずは圏論における各種の位相と対象の性質について、複数の条件が絡むものを一つ一つ分解して厳密に定義する。
圏 $\mathcal{C}$ における対象 $X \in \mathrm{Ob}(\mathcal{C})$ 上のふるい (sieve) とは、$X$ を余域 (codomain) とする射の集合であって、右からの射の合成について閉じているものをいう。
すなわち、$f \in S$ であり、かつ $\mathrm{codom}(g) = \mathrm{dom}(f)$ を満たす圏 $\mathcal{C}$ の任意の射 $g$ に対して、合成射 $f \circ g \in S$ が常に成り立つことである。
ある対象 $X$ に向かう任意の射の族 $\{f_i : X_i \to X\}_{i \in I}$ が与えられたとき、これらと他の任意の射を合成して得られるすべての射の集合 $S = \{ f_i \circ g \mid i \in I, \mathrm{codom}(g) = X_i \}$ は、$X$ 上のふるいとなる。これを「与えられた族によって生成されるふるい」と呼び、$\langle \{f_i\} \rangle$ と表記することがある。
圏 $\mathcal{C}$ 上のGrothendieck位相 (Grothendieck topology) $J$ とは、各対象 $X \in \mathrm{Ob}(\mathcal{C})$ に対して、$X$ 上の特定のふるいの集合 $J(X)$ (この元を「被覆ふるい」と呼ぶ)を割り当てる写像であり、以下の3つの公理をすべて満たすものをいう。
Barr完全圏とは、以下の4条件を満たす圏である:(1) 有限極限 (finite limit) を持つ。(2) 任意の射が正則エピ射とモノ射に一意に分解できる。(3) 正則エピ射の引き戻しは再び正則エピ射となる。(4) すべての同値関係が有効である (ある正則エピ射の核対として実現される)。
有限余極限 (finite colimit) を持つBarr完全圏において、対象 $X$ 上のふるい $S$ がコヒーレント位相 (coherent topology) $J_{coh}(X)$ に属するとは、$S$ が有限個の射の族 $\{f_i : X_i \to X\}_{i=1}^n$ を含み、それらが結合的に全射 (jointly surjective) であること、すなわちそこから誘導されるコプロダクト射 $\coprod_{i=1}^n f_i : \coprod_{i=1}^n X_i \to X$ が正則エピ射となることである。
ここでは、単なる「層条件を満たすこと」から、「有効エピふるい全体がGrothendieck位相になるための引き戻しの安定性」という論理的ギャップを埋め、カノニカル位相が正確に普遍的有効エピふるいと一致することを証明する。
圏 $\mathcal{C}$ における対象 $X$ 上のふるい $S$ が有効エピふるいであるための必要十分条件は、任意の表現可能前層 $h_Z = \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(-, Z)$ が $S$ に関して層条件を満たすことである。
証明:
$\mathcal{C}$ から $\mathbf{Set}$ への反変表現可能関手 $\mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(-, Z)$ は、圏 $\mathcal{C}$ における余極限を集合の圏 $\mathbf{Set}$ における極限 (limit) に変換する普遍的な性質を持つ。
$S$ が有効エピふるいである ($X \cong \mathrm{colim}_{f \in S} \mathrm{dom}(f)$) ならば、この極限への変換により
$$\mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(X, Z) \cong \lim_{f \in S} \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(\mathrm{dom}(f), Z)$$
という同型がすべての $Z$ に対して成り立つ。右辺の極限の元は $S$ 上の適合族 (matching family) であり、左辺の元は大域的元であるため、これはまさに $h_Z$ が $S$ に関して層であることを意味する。
逆に、すべての $Z$ について $h_Z$ が $S$ の層であるならば上記の同型が成り立つ。米田の補題 (Yoneda lemma) に基づく余極限の普遍性により、すべての対象 $Z$ に対してこの同型が自然に成立するような対象 $X$ は、図式 $S$ の余極限と同型でなければならない。ゆえに $S$ は有効エピふるいである。証明終
圏 $\mathcal{C}$ において、カノニカル位相 $J_{can}$ の被覆ふるいは、普遍的有効エピふるいの全体と正確に一致する。さらに、圏 $\mathcal{C}$ において「任意の有効エピふるいが引き戻しについて安定である」という条件が満たされる場合に限り、カノニカル位相は単なる有効エピふるいの全体と一致する。
証明:
第1段 (カノニカル位相のふるいが普遍的有効エピふるいであること):
$S \in J_{can}(X)$ とする。Grothendieck位相の安定性の公理より、任意の射 $g: Y \to X$ に対して引き戻しふるい $g^*S$ もまた $J_{can}(Y)$ に属する。カノニカル位相は最大の劣カノニカル位相であるため、$g^*S$ はすべての表現可能前層について層条件を満たす。補題2.1により、これは $g^*S$ が $Y$ 上の有効エピふるいであることを意味する。任意の $g$ についてこれが成り立つため、定義より $S$ は普遍的有効エピふるいである。
第2段 (普遍的有効エピふるいの全体がカノニカル位相をなすこと):
対象 $X$ 上の普遍的有効エピふるいの全体を $E_{univ}(X)$ とする。$E_{univ}$ がGrothendieck位相の3つの公理を満たすことを示す。
1. 極大性: 最大のふるい $t_X$ は恒等射を含み、自明に有効エピふるいである。任意の引き戻し $g^*t_X$ は $t_Y$ となるため、$t_X \in E_{univ}(X)$ である。
2. 安定性: $S \in E_{univ}(X)$ とし、$g: Y \to X$ をとる。任意の射 $h: Z \to Y$ に対して、$h^*(g^*S) = (g \circ h)^*S$ である。$S$ は普遍的であるため $(g \circ h)^*S$ は有効エピふるいである。したがって $g^*S$ 自身も普遍的有効エピふるいであり、$E_{univ}$ は引き戻しで安定である。
3. 推移性: $S \in E_{univ}(X)$ であり、任意の $f \in S$ について $f^*R \in E_{univ}(\mathrm{dom}(f))$ となるふるい $R$ を考える。$f^*R$ が有効エピふるいであるため $\mathrm{dom}(f) \cong \mathrm{colim}_{g \in f^*R} \mathrm{dom}(g)$ となる。これを $S$ が有効エピふるいであることによる余極限 $X \cong \mathrm{colim}_{f \in S} \mathrm{dom}(f)$ に代入すると、余極限の結合性 (colimits of colimits are colimits) により $X$ は $R$ の余極限と同型になる。この性質は任意の引き戻し後も維持されるため (仮定より $S$ と $f^*R$ が引き戻しで有効エピであり続けるため)、$R$ もまた普遍的有効エピふるいとなる。ゆえに $R \in E_{univ}(X)$ である。
以上により $E_{univ}$ はGrothendieck位相である。また、補題2.1より $E_{univ}$ に属するふるいは表現可能前層を層にするため、$E_{univ}$ は劣カノニカル位相である。カノニカル位相 $J_{can}$ は最大の劣カノニカル位相であるから $E_{univ} \subset J_{can}$ である。第1段で $J_{can} \subset E_{univ}$ を示しているため、$J_{can} = E_{univ}$ が成立する。
結論: カノニカル位相の被覆ふるいは正確に普遍的有効エピふるいである。もし圏 $\mathcal{C}$ が「有効エピふるいは自動的に引き戻しで安定である (普遍的である)」という性質を満たすならば、カノニカル位相は単なる有効エピふるいと完全に一致する。証明終
証明:
1. 極大性: 最大のふるい $t_X$ は恒等射 $id_X : X \to X$ を含む。単元族 $\{id_X\}$ から誘導されるコプロダクト射は $id_X$ 自身であり、これは自明に正則エピ射である。ゆえに $t_X \in J_{coh}(X)$ である。
2. 安定性: $S \in J_{coh}(X)$ とし、任意の射 $g : Y \to X$ をとる。$S$ はコプロダクト射 $\coprod_{i=1}^n f_i$ が正則エピ射となる有限部分族 $\{f_i\}_{i=1}^n$ を含む。各 $f_i$ と $g$ のファイバー積 $p_i : X_i \times_X Y \to Y$ をとる。有限余極限の引き戻しは引き戻しの余極限と同型になるため、コプロダクト $\coprod X_i \to X$ の $g$ に沿った引き戻しは $\coprod p_i$ となる。Barr完全圏において正則エピ射の引き戻しは正則エピ射であるから、$\coprod p_i$ も正則エピ射である。誘導された有限部分族 $\{p_i\}$ は引き戻しふるい $g^*S$ に含まれるため、$g^*S \in J_{coh}(Y)$ である。
3. 推移性: $S \in J_{coh}(X)$ であり、$f \in S \implies f^*R \in J_{coh}(\mathrm{dom}(f))$ となる $R$ を考える。$S$ は正則エピ射を誘導する有限部分族 $\{f_i\}_{i=1}^n$ を含む。仮定より各 $(f_i)^*R$ も正則エピ射を誘導する有限部分族 $\{g_{ij}\}$ を含む。正則圏において正則エピ射の合成は再び正則エピ射となるため、有限部分族 $\{f_i \circ g_{ij}\}$ も正則エピ射を誘導する。この有限部分族は $R$ に含まれるため、$R \in J_{coh}(X)$ が成り立つ。証明終
証明:
任意の対象 $Z$ に対し、表現可能前層 $h_Z = \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(-, Z)$ が $J_{coh}$ の層になることを示す。Barr完全圏において、任意の正則エピ射 $p: U \to X$ は自身の核対 $U \times_X U \rightrightarrows U$ の余等化子である。反変関手 $\mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(-, Z)$ は余極限を極限に変換するため、系列 $\mathrm{Hom}(X, Z) \to \mathrm{Hom}(U, Z) \rightrightarrows \mathrm{Hom}(U \times_X U, Z)$ は集合の圏における等化子となる。被覆ふるい $S \in J_{coh}(X)$ は、コプロダクト射 $p = \coprod f_i : \coprod X_i \to X$ が正則エピ射となる有限部分族 $\{f_i\}$ を含む。同型 $\mathrm{Hom}(\coprod X_i, Z) \cong \prod \mathrm{Hom}(X_i, Z)$ を等化子図式に適用すると、被覆部分族 $\{f_i\}$ に対する適合条件を満たす元に対して一意な大域的元が存在することが直ちに従う。ゆえに $h_Z$ は層である。証明終
一般の圏論において $J_{can} = J_{coh}$ を導くためには、対象が「任意の結合全射な族が有限の部分結合全射族を含む」という強い意味でコンパクトであることが要求される。しかし、$\mathbf{CHaus}$ においてはこの性質が破綻する。
無限個の点を持つコンパクトHausdorff空間 $X$ (例えば閉区間 $[0,1]$) を考える。各点 $x \in X$ に対して包含写像 $f_x : \{x\} \hookrightarrow X$ を考える。この射の族 $S = \{ f_x \}_{x \in X}$ の像の和集合は $X$ 全体となるため、集合論的にも圏論的にも結合的に全射 (jointly surjective) である。しかし、この族からいかなる有限部分族を取り出しても、その像は有限個の点に過ぎず、$X$ 全体を覆うことは決してない。したがって、$\mathbf{CHaus}$ の対象は一般の圏論的な意味ではコンパクトではない。
このようにナイーブな圏論的コンパクト性が破綻するため、$\mathbf{CHaus}$ における $J_{can} = J_{coh}$ の証明には、被覆が単なる結合全射ではなく「普遍的有効エピふるい」であることを利用した固有のアプローチが必要となる。
証明:
$S \in J_{can}(X)$ を普遍的有効エピふるいとする。定理2.2により、これは特に $X \cong \mathrm{colim}_{f \in S} \mathrm{dom}(f)$ を意味する。
背理法を用いる。$S$ のいかなる有限部分族 $F$ をとっても、その像の和 $M_F = \bigcup_{f \in F} \mathrm{Im}(f)$ が $X$ を覆わない($M_F \neq X$)と仮定する。
【主張1】$S$ の有限部分族の全体 $\Lambda$ を包含関係によって有向集合とみなすとき、各 $\lambda \in \Lambda$ に対して $M_\lambda = \bigcup_{f \in \lambda} \mathrm{Im}(f)$(閉集合)とおけば、$x_\lambda \in X \smallsetminus M_\lambda$ となる有向点族(ネット) $(x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda}$ を構成できる。さらに、このネットの任意のクラスター点 $x^* \in X$ に対し、単元集合 $\{x^*\}$ は元の $X$ の位相において開集合ではなく、ある特定の $\lambda_0$ 以降(尾部)では、常に $x_\lambda \neq x^*$ となる。
証明: 各 $\lambda \in \Lambda$ に対し、仮定より $M_\lambda \neq X$ であり、$X$ はコンパクトHausdorff空間であるから各射の像 $\mathrm{Im}(f)$ は閉集合、したがってその有限和 $M_\lambda$ も閉集合である。よって $X \smallsetminus M_\lambda$ は空でない開集合であり、ここから各 $\lambda$ に応じて点 $x_\lambda \in X \smallsetminus M_\lambda$ を選ぶことでネット $(x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda}$ が定まる。
$S$ は $X$ の普遍的有効エピふるい(全射被覆)であるため、ある $f_0 \in S$ が存在して $x^* \in \mathrm{Im}(f_0)$ となる。ここで、単元集合からなる有限部分族 $\lambda_0 = \{f_0\} \in \Lambda$ を固定する。有向集合の定義より、任意の $\lambda \ge \lambda_0$ に対して $f_0 \in \lambda$ であるから、$\mathrm{Im}(f_0) \subset M_\lambda$ となり、したがって $x^* \in M_\lambda$、すなわち $x^* \notin X \smallsetminus M_\lambda$ が常に成り立つ。
もし $\{x^*\}$ が $X$ の開集合(孤立点)であると仮定すると、$\lambda \ge \lambda_0$ において空でない開集合 $X \smallsetminus M_\lambda$ は $x^*$ を包含し得ないため、この開集合の中には必ず $x^* \neq x_\lambda$ となる点 $x_\lambda$ が存在する(もし $X \smallsetminus M_\lambda = \{x^*\}$ であれば、先ほどの $x^* \notin X \smallsetminus M_\lambda$ に直ちに矛盾する)。
したがって、$\{x^*\}$ が開集合でないことは自明であり、ある特定の $\lambda_0$ 以降(尾部)では、常に $x_\lambda \neq x^*$ となる。以後の議論では、有向集合 $\Lambda$ をこの尾部 $\Lambda_{\ge \lambda_0}$ に制限することで、初めからすべての $\lambda \in \Lambda$ において $x_\lambda \neq x^*$ であるとして進める。(主張1の証明終)
【主張2】有向集合 $\Lambda$ 上の、すべての尾部 $\Lambda_{\ge \lambda}$ を含む主でないウルトラフィルター $\mathcal{U}$ を一つ固定する。この $\mathcal{U}$ に沿ったネットの極限を $x^* = \lim_{\mathcal{U}} x_\lambda$ とする。このとき、集合 $Y = \Lambda \cup \{\infty\}$ に対し、$\Lambda$ の各点を孤立点とし、$\infty$ の基本開近傍系を $\{ U \cup \{\infty\} \mid U \in \mathcal{U} \}$ と定義した位相空間 $Y$ はコンパクトHausdorff空間となり、写像 $g: Y \to X$ ($\lambda \in \Lambda \implies g(\lambda) = x_\lambda, g(\infty) = x^*$)は連続写像となる。
証明: $\mathcal{U}$ に沿ったネット $(x_\lambda)$ の極限が $x^*$ であるとは、$x^*$ の任意の開近傍 $V \subset X$ に対して、添字の集合 $\{ \lambda \in \Lambda \mid x_\lambda \in V \}$ が $\mathcal{U}$ に属することを意味する。$X$ はコンパクトHausdorff空間であるため、この極限 $x^*$ は空間 $X$ 内に必ず一意に存在する。
$\Lambda$ の各点を開集合とし、$\infty$ の近傍をウルトラフィルター $\mathcal{U}$ によって規定するため、空間 $Y$ がコンパクトHausdorff空間になることはウルトラフィルターの標準的な性質から従う。また、写像 $g: Y \to X$ の $\infty$ における連続性を示す。$x^*$ の任意の開近傍 $V \subset X$ をとると、前述の極限の定義より、集合 $U = \{\lambda \in \Lambda \mid x_\lambda \in V\}$ は必ず $\mathcal{U}$ に属する。定義より $U \cup \{\infty\}$ は $Y$ における $\infty$ の開近傍であり、その $g$ による像は $V$ に包含される($g(U \cup \{\infty\}) \subset V$)。ゆえに、$g: Y \to X$ は連続写像である。(主張2の証明終)
【主張3】普遍的有効エピふるい $S$ の連続写像 $g: Y \to X$ による引き戻し条件を用いることで、「いかなる有限部分族も $X$ を覆わない」という背理法の仮定に対して決定的な矛盾を直接導くことができる。
証明: $S \in J_{can}(X)$ は普遍的有効エピふるいであるため、連続写像 $g: Y \to X$ による引き戻しふるい $g^*S$ は $Y$ の全射被覆(有効エピふるい)をなす。
したがって、極限の同型 $C(Y, [0,1]) \cong \lim_{h \in g^*S} C(\mathrm{dom}(h), [0,1])$ が成り立つ。
ここで、関数 $k: Y \to [0,1]$ を $k(\infty) = 1$、および任意の $\lambda \in \Lambda$ について $k(\lambda) = 0$ と定義する。$\mathcal{U}$ は主でないウルトラフィルターであるため、$\infty$ は $\Lambda$ の集積点であり、$k$ は $\infty$ において不連続である。
しかし、任意の $h \in g^*S$ について、合成 $k \circ h : \mathrm{dom}(h) \to [0,1]$ が連続関数となることを以下に示す。
$h \in g^*S$ の定義より、ある $f \in S$ と連続写像 $u: \mathrm{dom}(h) \to \mathrm{dom}(f)$ が存在して $g \circ h = f \circ u$ が成り立つ。この $f$ に対し、テイル $U_f = \{\lambda \in \Lambda \mid \lambda \ge \{f\}\}$ は $\mathcal{U}$ に属するため、$U_f \cup \{\infty\}$ は $Y$ における $\infty$ の開近傍である。
$h$ は連続であるため、$h^{-1}(U_f \cup \{\infty\})$ は $\mathrm{dom}(h)$ の開集合である。
任意の $z \in h^{-1}(U_f \cup \{\infty\})$ に対して、$h(z) \in U_f \cup \{\infty\}$ であるから、$g(h(z)) \in \{x_\lambda \mid \lambda \in U_f\} \cup \{x^*\}$ となる。一方で $g(h(z)) = f(u(z)) \in \mathrm{Im}(f)$ である。
$\lambda \in U_f$ の定義より $\mathrm{Im}(f) \subset M_\lambda$ であり、構成より $x_\lambda \notin M_\lambda$ であるため、すべての $\lambda \in U_f$ について $x_\lambda \notin \mathrm{Im}(f)$ である。ゆえに $g(h(z)) = x^*$ でなければならない。
【主張1】よりすべての $\lambda \in \Lambda$ について $x_\lambda \neq x^*$ であるため、$g(y) = x^*$ となる $y \in Y$ は $\infty$ のみである。したがって $h(z) = \infty$ が結論づけられる。
これは $h^{-1}(U_f \cup \{\infty\}) \subset h^{-1}(\infty)$ を意味する。逆の包含関係は自明であるため、$h^{-1}(\infty) = h^{-1}(U_f \cup \{\infty\})$ が成り立つ。$\{\infty\}$ は $Y$ の閉集合なので $h^{-1}(\infty)$ は閉集合であり、かつ開集合でもある(開かつ閉集合である)。
関数 $k \circ h$ はまさにこの開かつ閉集合 $h^{-1}(\infty)$ の指示関数($\infty$ に写るなら $1$、それ以外なら $0$)であるため、$\mathrm{dom}(h)$ 上で完全に連続である。
これが任意の $h \in g^*S$ について成り立つため、族 $\{k \circ h\}_{h \in g^*S}$ は極限の元(適合族)をなす。極限の同型により、$k$ は $Y$ 上の大域的な連続関数でなければならないが、これは $k$ が不連続であることに決定的に矛盾する。(主張3の証明終)
結論としての矛盾の導出:
【主張3】において導かれた矛盾は、「$S$ のいかなる有限部分族も $X$ を覆わない」という背理法の最初の仮定のみに起因する。したがって、この仮定は誤りであり、$S$ は必ず $X$ を覆う有限部分族を含まなければならない。これにより、$\mathbf{CHaus}$ において普遍的有効エピふるい(カノニカル位相)は常に有限全射被覆(コヒーレント位相)を誘導し、$J_{can} = J_{coh}$ が完全に成立する。証明終
第4部で示した証明は一見すると位相空間論に特化しているように見える。しかし、Topos理論および圏論的双対性の視座からは、この証明は極めて自然な代数的・圏論的構造の現れであることが理解できる。ここではその抽象化のメカニズムを解説する。
一般の圏論において「任意の結合全射」を対象にすると条件が強すぎるという反省から、特定のGrothendieck位相 $J$ に相対化したコンパクト性が定義される。
サイト $(\mathcal{C}, J)$ における対象 $X$ が $J$ に関してコンパクト ($J$-コンパクト) であるとは、$X$ 上の任意の被覆ふるい $S \in J(X)$ に対して、ある有限部分族 $F \subset S$ が存在して、その $F$ から生成されるふるい $\langle F \rangle$ もまた $J(X)$ に属することである。
有限余極限を持つBarr完全圏 $\mathcal{C}$ において、カノニカル位相とコヒーレント位相が一致すること ($J_{can} = J_{coh}$) は、すべての対象が $J_{can}$-コンパクトであることと同値である。
証明:
($\implies$): $J_{can} = J_{coh}$ と仮定する。任意の対象 $X$ と $S \in J_{can}(X)$ をとると、$S \in J_{coh}(X)$ である。コヒーレント位相の定義より、$S$ は結合的に全射な有限部分族 $F$ を含む。Barr完全圏において結合全射な族は有効エピふるいを生成するため、$\langle F \rangle \in J_{can}(X)$ となる。ゆえに $X$ は $J_{can}$-コンパクトである。
($\impliedby$): すべての対象が $J_{can}$-コンパクトであると仮定する。$S \in J_{can}(X)$ をとると、定義より有限部分族 $F \subset S$ が存在し $\langle F \rangle \in J_{can}(X)$ となる。定理2.2より $\langle F \rangle$ は普遍的有効エピふるいであるため、特に $X \cong \mathrm{colim}_{f \in \langle F \rangle} \mathrm{dom}(f)$ が成り立つ。有限部分族 $F$ がこの余極限を生成するため、Barr完全圏の性質によりコプロダクト射 $\coprod_{f \in F} \mathrm{dom}(f) \to X$ は正則エピ射となる。したがって $F$ は結合的に全射であり、$S \in J_{coh}(X)$ が成り立つ。証明終
この定理により、問題は「いかにして対象が $J_{can}$-コンパクトであることを圏論的に証明するか」に帰着される。$\mathbf{CHaus}$ における証明は、実は「代数と幾何の双対性 (Categorical Duality)」を用いた証明の具体的な実現に他ならない。
Gelfand双対性により、コンパクトHausdorff空間の圏 $\mathbf{CHaus}$ の双対圏 $\mathbf{CHaus}^{op}$ は、可換単位的 $C^*$-代数の圏 $\mathbf{cC^*Alg}$ と圏同値になる。このとき、空間 $X$ は連続関数のなすBanach環 $C(X, \mathbb{C})$ と対応する。
圏論的双対性のもとでは、幾何的な空間の圏 $\mathcal{C}$ における有効エピふるい (余極限図式) は、代数の圏 $\mathcal{A}$ における極限図式 (limit diagram) へと変換される。
第4部の定理4.2の証明において、有向点族とその極限を用いてコンパクト空間 $Y$ を引き戻しとして構成した操作は、まさに代数側における極限の保存と局所情報の統合(米田の補題の適用)を幾何学的に言い換えた構造そのものである。このように、トポス理論における幾何学的性質は、双対圏における代数的な有限性(有限交叉性やイデアルの極大性)へと純粋に抽象化される。
この双対性のアプローチが一般の圏論でいかに強力に機能するかを示すため、プロ有限空間 (Stone空間) の圏 $\mathbf{Stone}$ における $J_{can} = J_{coh}$ の証明を、双対であるBoole代数の圏 $\mathbf{Bool}$ を用いて純粋に代数的に実行する。
$\mathbf{Stone}$ を全不連結なコンパクトHausdorff空間の圏とする。Stone双対性により $\mathbf{Stone}^{op} \simeq \mathbf{Bool}$ (Boole代数の圏) である。
証明:
対象 $X \in \mathbf{Stone}$ 上の任意の普遍的有効エピふるい $S \in J_{can}(X)$ をとる。$X$ はあるBoole代数 $B$ に対応する。双対性により、$S$ は $\mathbf{Bool}$ における $B$ を頂点とする極限図式、特に有効モノコシーブ (effective monomorphic cosieve) に対応する。
Boole代数は代数多様体 (variety of algebras) をなすため、すべてのモノ射は有効である。したがって、このコシーブは $B$ から様々な商代数 $B/I_\alpha$ (ここで $I_\alpha$ はイデアル) への全射準同型の族 $\{ \pi_\alpha : B \to B/I_\alpha \}$ であり、これが極限 (直積への埋め込み) になるということは、イデアルの共通部分がゼロであることを意味する。
$$\bigcap_{\alpha} I_\alpha = \{0\}$$
ここで背理法を用いる。このコシーブがいかなる有限部分コシーブも有効にしないと仮定する。すなわち、いかなる有限個のイデアルの共通部分もゼロにならないと仮定する。
Boole代数において、任意の有限共通部分が $\{0\}$ にならないようなイデアルの族 $\{I_\alpha\}$ は、有限交叉性 (finite intersection property) を持つフィルターと双対的な「真のイデアル」を生成する。Zornの補題により、これはある極大イデアル $\mathfrak{m} \subset B$ に含まれる。
すると、すべての $\alpha$ について $I_\alpha \subset \mathfrak{m}$ となる。この極大イデアル $\mathfrak{m}$ に対応する元 $e \in B$ ($e \notin \mathfrak{m}$) はゼロではないが、各商代数 $B/I_\alpha$ に射影するとゼロになり、全体を統制する極限の性質に矛盾を引き起こす (幾何学的には、すべての像が被覆できないある「点」が残ることに相当する)。
代数学的な有限交叉性の定理により矛盾が導かれるため、必ず有限個の $\alpha_1, \dots, \alpha_n$ で $\bigcap_{k=1}^n I_{\alpha_k} = \{0\}$ とならなければならない。テキストの対応関係から、これは元の $\mathbf{Stone}$ において、有限部分族の射の像が $X$ 全体を覆うこと、すなわち $S \in J_{coh}(X)$ を意味する。
ゆえに $\mathbf{Stone}$ において $J_{can} = J_{coh}$ であることが純粋に代数的・圏論的に証明された。証明終